現在2.5GHz帯の獲得を目指し、次世代PHSで申請しているウィルコムとWiMAX陣営3社の計4社による2枠の争奪戦が繰り広げられております。
ウィルコムは技術力や次世代PHSならではのメリットを説明し、KDDI陣営ことワイヤレスブロードバンド企画はWiMAXでの実績と技術力を強くアピール、孫社長が大暴れするOpenwinでは他社への文句ばかり(言いがかり含む)を繰り返し、ドコモが背後についているアッカ・ワイヤレスはちょっと存在感が薄い感じと個人的には受け取っていたりしますが、そのWiMAX陣営(特にOpenwin)がよく切り出す理屈に「WiMAX2陣営が選ばれればユーザーが事業者を自由に乗り換えられ、2社間でも競争できて有利」などと言うものがあります。

でもそれを聞くたびに思うんですよ、
WiMAXが2社選ばれた方が本当にユーザーの選択肢になるの？
ということを。

個人的には「通信方式が選べるメリット」と「同じ通信方式で通信事業者が選べるメリット」は別物だと思っています。「次世代PHS＋WiMAX」は前者、「WiMAX×2」は後者ね。

通信方式が選べるメリットは、ある意味FTTH(光)とADSLのどっちかを選べるってことに似ていると思います。
FTTHは下りも上りも速い、しかし普通に一戸建てで使うにはちと高いし工事も必要。
ADSLはFTTHよりは速度が出ない可能性が高いが、既に引き込んである電話線を利用できるので家への引き込み工事不要で価格も安い。
しかし家庭にはそれぞれ事情があり、ADSLは引けるがFTTHは無理というお宅もあれば、逆に電話の経路上の理由でADSLは利用できずFTTHしか選択肢がないということもあるわけです。
そういう意味で通信方式の選択肢がある、ということはとてもユーザーにとってはありがたいわけです。しかしリスクとして、それぞれの専用端末(モデムなど)の使い回しが基本できないだろう、という部分もあります。

では同じ通信方式で通信事業者が選べるというのは何かというと、ある意味ではフレッツでのプロバイダが選べることにも似ていますし、フレッツADSLにするかヤフーBBにするかアッカにするかというADSLで何処を回線事業者に選ぶかということにも似ています。
このADSLの場合で言えば、ADSLが利用できることがまず大前提になります。
ということは、通信回線の選択肢はないがプロバイダ選びという選択肢がある、言い換えれば気に入らないプロバイダだったら機械は使いまわしでプロバイダのみ変更ということもある程度はできるわけです。

おそらくWiMAX陣営が言っていることは後者の方であり、WiMAXの通信カードだったら通信事業者を選べるというメリットがユーザーにある、ということを言いたいのだと思います。つまり次世代PHSを買って後からWiMAXにしようとしても、新しく端末も買わねばならないぞと、だからWiMAXが2陣営選ばれる方が好ましいという理論なのでしょう。

しかし通信方式を選べるメリットはそれとは別に存在します。
同じWiMAX方式ではどちらにしても利用できない可能性がありますが、通信方式自体が違う次世代PHSなら利用できる可能性もあるでしょう。
またWiMAXと違ってマイクロセルである次世代PHSは、よりきめ細かいエリア展開も見込めるでしょう。これはケータイよりも高い周波数帯である2.5GHz帯を利用する上では重要なポイントの1つと言えます。

また競争という意味では、WiMAXでも次世代PHSでも競争は可能です。
何故なら競争においては通信方式が同じかどうかではなく、利用環境が同じかどうかが競合のポイントとなるからです。
事実ケータイキャリアには「W-CDMA」「CDMA2000」「現行PHS」という3種類の通信方式が存在し、それらは通信方式の違いを超えて価格競争やサービス競争を繰り広げています。
そういう意味では、WiMAXだけだと競争が進み次世代PHSが選ばれると競争が進まないというのは論点が違えています。
むしろ違う通信方式の異なる特徴がある方が互いに切磋琢磨しあうのではないでしょうか。

WiMAX陣営というかOpenWinとしましては、どうにかして自分らの有利な方にもっていきたいのでしょうが、しかしながら価格競争や通信方式の選択というメリットを考えれば、次世代PHSをノケモノにしての議論というのは論外のように思います。

もっとわかりやすく言えば、同じ路線で並行して新幹線を走らせてもらってもあまりありがたくはないんですよ。
まぁ新幹線が2本並行して走っていればその分利用時間帯の選択はできるでしょうが、代わりに料金の選択や交通の選択が無くなるわけです。
個人的には新幹線だけでなく、バスやタクシーといったさまざまなニーズにあった選択肢を用意すること、それこそが2.5GHzに必要な議論ではないかと考えます。