「自然に還す」も犯罪者のセリフです
前にACのCMで、飼えなくなった犬を捨てる親子がいて、母親が「ごめんね。ごめんね。どうか、どうか、親切な人に見つけてもらってね」と言って、ナレーションで「優しそうに聞こえても、これは、犯罪者のセリフです。どんな理由があろうと、どんなに心を痛めようと、動物を捨てること、虐待することは犯罪です」
ってのがあったのね。
んで今日、2023年6月1日にアメリカザリガニとアカミミガメ(3種)が条件付特定外来生物にしたいされたのよ。
従来の特定外来生物を愛玩(ペット)飼育する場合には、特定外来生物指定前から愛玩飼育していたことに加えて指定から6ヶ月以内に大臣に申請して許可を得た上で、逃げ出さない施策を講じた飼育施設内でのみ飼育可能、水換え等の一時的な場合を除いて移動は不可、かつ繁殖も不可、子供が生まれたら即殺処分。という『飼い続けてもいいけど子孫は残すな、生まれたら即殺せ』というトンデモなく厳しい状況だったわけですよ。寿命短い生き物なんて死に絶えるまで待て、と言われてるみたいなもんでね…カダヤシ…悲しかったなー…
それに比べると今回の条件付特定外来生物の飼育はだいぶゆるいです。
まず指定前からの飼育に限るという条件が排除、指定後でも新たに飼育することが可能に。大臣への申請や許可も不要。飼育においては逃げ出さないような施策は求められるが、許可不要なので飼育施設の移動も可能。繁殖もOK。飼育目的での捕獲や飼育施設までの生きたままの移動もOK。
ただし責任を持って飼育することが求められ、やむを得ず飼育出来ない場合には譲渡先を探すことが求められている。それでも飼育先が見つからない時には苦痛の少ない形での殺処分を推奨しているが、事実上努力義務に近い形なのかな。要は飼える分だけ飼って、飼えない分は捕まえるな、繁殖させるな、ってことを暗に示している。
特定外来生物と条件付特定外来生物は別物みたいに思ってる人もいるっぽいけど、実際には特別に飼育に関する条件が緩和された特定外来生物、それが条件付特定外来生物であり、共通点も多い。
まず販売禁止。これはどちらも同じ。研究目的等特別な理由と許可がある場合を除いて禁止。
譲渡も頒布会などの複数人への譲渡はどちらも出来ない。ただ条件付特定外来生物の場合は飼育困難になった場合にのみ、無償で受け入れ可能な人への個人譲渡が認められている。
捕獲自体はOK、捕獲した場所ですぐに放すのもOK。
ただし生きたまま他の場所へ放したり移動したりは禁止。これはブラックバスなんかがいい例で、釣ったその場で逃がせばセーフだが、ちょっと歩いて別の場所に逃すとアウト。生きたまま持って帰って家で〆てもアウト。その場で〆て持ち帰るのはOK。
飼育に関しては条件付特定外来生物のみ許可なしでも許されているので、条件付特定外来生物であれば生きたまま飼育場所への移動はOK。ただしそれ以外に放すことは出来ないし、例え短期間であっても飼育後に個体を放すと刑罰の対象。3年以下の懲役または300万円以下の罰金あるいはその両方、だったかな。
つまり条件付特定外来生物であっても特定外来生物であっても、野に放すなってことです。
んでこれは本来は飼育種全般に言えること。これは外来生物はもちろん、国内外来種もそうだし、それどころか地域で捕獲したワイルド個体を飼育した場合でも戻すことは自然破壊になる、というのが今どきの常識です。
ついこの前、知り合いの熱帯魚ショップ店員からこんな話を聞きました。
客「クワガタのメスってありますか?」
店員「クワガタのメス?メスですか??」
客「子供がクワガタのメスが好きだっていうので」
店員「なるほど。クワガタのメスはあちらになりますよ、飼うのは初めてですか?」
客「いえ、子供が逃したのでまた買いに来ました」
店員「え?」
客「子供が飽きたと言うので自然に還してあげたんですよ、でもまた欲しいって言うので同じやつを買います」
店員「いや…それって…逃げちゃったんじゃなくて、逃したんですか?」
客「はい、もちろんです」
店員「それは…ちょっとマズいですよ」
客「は?なに言ってんの?クワガタなんて自然のものだから自然に還してあげるのが当たり前でしょ!?」
店員「いや、外来種なので逃がすとヤバいんですよ…」
客「はぁ?何いってんの?日本でも同じ種類がいるじゃないのよ!!」
店員「でも地域ごとに違うので外来種を放つのは問題ですし、そうでなくても一度飼育した生き物を放つのはヤバいんですよ」
客「なによそれ?犯罪行為だとでも言うの!?」
店員「場合によってはそうなる可能性はあります…」
というやり取りがあったそうな。どことは言わんけど、むしろ言いたいけど、言わんでおくw
何が言いたいかというと、生き物を野に放つことは悪いことではない、むしろ良いことだと思いこんでいる無知な人がいるってことです。
だからACのCMじゃないけれど、「自然に還す」っていうのも犯罪者のセリフなんですよ。
とにかくやめてください、生き物を野に放つのは。
特定外来生物に指定されたから放してはいけない、のではなく、
密放流が繰り返された結果としてやむを得ず特定外来生物に指定され法律で罰するぞ、って脅しかけねばならないぐらいに、悪意なく犯罪行為をしている一般人が大勢いたから特定外来生物に指定されるんです。
その事実を知ってほしいです。