ウィルコムはハイエンド端末を販売できるのか

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ウィルコムがハイエンドと位置付けている端末『WX330K』
現在ウィルコムの音声端末には、本当の意味でハイエンドと呼ばれる端末が存在しません。
ウィルコムはWX330Kを現状のハイエンドと位置付けておりますが、WX330Kは京セラのハイエンド端末WX310Kの後継機などではなく、WX320Kのバージョンアップ程度の機能しか有しておりません。
故に現状のウィルコムの音声端末は、ミドル端末までしか販売されていないと言っても過言ではないわけです。

もしかしたら現在ウィルコムはAdvancedW-ZERO3[es]をハイエンド端末にしたいという思惑があるのかも知れません。
たしかに機能的にはアドエスはハイエンド端末に相応しい存在ではあるものの、そこはやはりスマートフォン、通常の音声端末のような万人向けのハイエンド音声端末ではないわけです。
では他キャリアはどうかと言いますと、ドコモもauもソフトバンクもハイエンド端末を吐いて捨てるほど大量に投入しております。

何故ウィルコムはハイエンド端末を投入しないのでしょうか?
これからもウィルコムはハイエンド端末を販売することができるのでしょうか?

ハイエンド端末と一括りに言ってしまうのは簡単ですが、実際にはどのような端末がハイエンドと呼ばれるのでしょうか。

他キャリアを見る限りでは、そのキャリアのその時点での主要サービスのほぼ全てを利用できることと、その時点での各端末に搭載されている端末単体で利用できる機能をほぼ全て搭載していること、それこそがハイエンド端末である条件のようです。
このハイエンドの条件はドコモの端末を考えるとよくわかります。
FOMAのいわゆる全部入りのハイエンド端末は『90xシリーズ』として存在し、全部入りではないミドル端末は『70xシリーズ』として存在しています。
そのドコモFOMAの90xシリーズと70xシリーズの条件付けこそがハイエンド端末とミドル端末を分ける境界線となっているわけなのです。

そのように考えるとウィルコムの最新端末であるWX330Kはやはりミドル端末相当でしかありませんし、ある意味機能的に最上位に位置するWX310Kであっても今の時分から見ればミドル端末程度でしかないということがハッキリわかります。
では諸般の事情は考慮しない前提で、ウィルコムが技術的に提供出来そうなハイエンド端末とはどのようなものでしょうか。

まずサービス的なハイエンドについては、現状のウィルコムが提供しているサービスのほぼ全てはWX330Kで利用できている状況にあると言っても過言ではないはずです。もしかしたらウィルコムがWX330Kをハイエンドと称しているのはこういう理由なのかも知れません。

では端末単体で利用できる機能についてはどうかというと、これはウィルコムの音声端末はやはりミドル程度の機能しかないと言わざるをえません。

まずは昨今では搭載が珍しくなくなったワンセグ機能、このワンセグ機能を搭載した音声端末はウィルコムにはまだ存在しません。
時流としてワンセグ搭載は当たり前となっていますし、ユーザーの中にはワンセグ非搭載という理由でウィルコムを選ばないという症状(本来プラン内容で選ぶはずのケータイを端末で選ぶという現象)も発生しており、ウィルコムが真のハイエンド端末を投入するにはワンセグはやはり必要な機能であると言えるでしょう。

また導入が望まれる機能としてはGPSが存在します。
現状ウィルコム端末は基地局情報から位置情報を得ているわけですが、GPSでの位置情報も利用できるようになればその精度はさらに高まります。
元々基地局情報を元にした位置情報は携帯よりもPHSの方が細かく情報を得られる傾向にありますので、GPSを搭載することでウィルコムPHSは携帯以上の位置情報端末へと変貌する可能性は十分にあると言えます。

ウィルコムのハイエンド端末としては、やはりWX310Kの特徴であるミュージックプレイヤーや動画プレイヤーなどの機能も外せないでしょう。
ウィルコムは着うたなどのコンテンツビジネスが貧弱でもありますし、その辺りは携帯以上にユーザーへフレンドリーな機能として搭載して欲しいものです。
もし可能であるならば多くのファイル形式に対応し、microSDカードを差し替えるだけで様々な保存形式のファイルを再生できるような機能へと進化させて欲しいものです。

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このような機能さえ搭載すれば、他キャリアに遜色がないハイエンド端末としてユーザーに受け入れられるのかも知れません。
しかし実際はそう簡単にはいかないでしょう。
何故ならハイエンド端末が投入されるとしたら、今まで以上に非常に高い端末となる可能性が高いからです。

ドコモの905iシリーズを例に見てみましょう。
バリューコースで実質支払い総額が5万円前後、月の支払いが2100円も取られています。
まぁここまでの価格にならないとしても(ハード依存前提の課金サービスがウィルコムにはほぼ存在しない為)、ウィルコムのハイエンド端末もW-VALUE SELECTの実質支払額で月1000円以上になる可能性は否めないでしょう。
仮に実質月1000円で販売する前提だとして、W-VALUE SELECTの賦払金と割引は幾らになるでしょうか。

ウィルコムの現在のW-VALUE SELECTの価格・割引設定は、ほぼ全てのユーザーが実質端末代金として提示してある額だけ払えば端末を購入出来るように調整されています。
音声端末の場合には割引額が最大でも1690円、安心だフォン対応端末では最大790円、割引額が最も高いW-ZERO3(WS003SH/WS004SH)であっても2100円の額で抑えています。
これにはおそらく理由があり、1690円は昼得コースの長期割引サービス3年超+複数割引サービス適用時の1661円をわずかにオーバーしているもののほぼ割引満額を満たしており、またそれ以外のプランでは全て割引満額が適用されることとなります。
また安心だフォン対応端末の最大割引790円は安心だフォン基本料金最安価格の716円となりほぼ割引満額を満たし、またウィルコム定額プランもしくはデータ向けプランの利用が前提と思われるW-ZERO3についてはほぼ割引満額に到達するようになっています。
また昨今の価格設定から考えると、通常の音声端末の割引は最大1610円程度、安心だフォンは最大720円程度、W-ZERO3は最大2100円程度を意識しているようにうかがえます。
つまりウィルコムの割賦販売の割引額は、実際に提示した実質価格になるような調整がされていることがうかがえるわけです。

この前提で考えると、ウィルコムのハイエンド端末のW-VALUE割引額は1610円、がんばっても1660円程度で、実質支払額が1000円ほどになることが予想できます。
とすると、W-VALUE SELECT価格は6万3840円、24回払いでは2660円×24回、W-VALUE割引額が1660円、実質支払額が1000円×24回となるだろうと思われます。もちろんもっと高い可能性もあるわけです。

とするならば端末代を含めた実質ケータイ代は多くの場合は月3900円(ウィルコム定額プラン2900円+端末実質支払額1000円)となるわけで、現状のケータイユーザーがこれをどう受け取るかはとても微妙な価格帯となります。
なんせ905iシリーズがタイプSSバリューで契約すれば、端末代を含めた実質ケータイ代は月3150円となるわけでして、このことを考えるとなかなかウィルコムとしてはハイエンドを出し辛い状況にあるようにも思われます。

では安く見せることはできないのでしょうか?
というと方法論だけで言えば実は不可能ではありません。
ソフトバンクのような手法をとればいいのです。
つまりソフトバンクのように最大割引額を最低支払額以上まで引き上げ、安く割引しているように見せながら最大割引が適用されるケースを減らせば、少なくとも安く見せることだけは可能となるわけです。

まぁ実際問題としてはある程度の端末支払いをさせつつ割引額を大きくと言う感じになるでしょうから…いろいろ考えて計算しますと…月3400円で割引額は3100円ぐらいでどうでしょうか。
これなら端末代は月300円で済むように見えますが、実際にはウィルコム定額プランの基本料金しか使っていないユーザーは月500円の支払いが生じ、ウィルコム定額プランで2200円で利用しているユーザーは月1200円の端末代金支払いが生じる可能性が出てきます。
ソフトバンク的に考えれば安く見せて実は高く徴収できるので大成功です…思わぬ形でソフトバンクの価格設定が高いのは当たり前かのような結果が出てしまいましたが、このようなソフトバンク的手法を取るならばウィルコムも安く見せることは可能だとわかります。

ではこの方法だとユーザーはウィルコムのハイエンド端末を買うのでしょうか?
私はそれは難しいとしか思えません。

既存のウィルコムユーザーの多くはソフトバンクのカラクリを知っていますので、ウィルコムがそれを真似したならばすぐに見破ることでしょう。
またウィルコム以外のユーザーへアピールするにはソフトバンク並にCMを打つ必要があるだろうことから、現在のウィルコムにそれをやるだけのメリットがあるとは思えません。むしろリスクの方が大きいでしょう。

ウィルコムがソフトバンク的割賦販売を導入することは、やってやれないことはないものの様々な理由でやる理由がないようにも見えます。もしやるのであれば、ソフトバンクのプランまで丸ごと真似てやらねば厳しいでしょう…というかそれをやっても尚厳しいでしょう…

とするならば残りの方法は1つだけ、実際に支払額を安く抑えてハイエンド端末を投入することは出来ないのでしょうか?
実はこれについては実現が可能な時期が近づいているのではないか、と私は考えています。
何故ならワンセグケータイが当たり前の存在になるほど普及したことで、昔ほどワンセグユニットが高価な存在ではなくなったと予想できるからです。

どんな製品でも出始めは高いものです。
しかしどんな製品でも基本的に売れれば単価が下がってくるもの、それはケータイやその部品についても同じことが言えます。
そのように考えていくとより安い価格でウィルコムがハイエンド端末を投入する可能性も否定は出来ません。
もしかしたら今回この記事で考えてきたことは今までのウィルコムのジレンマを代弁していたに過ぎず、近い将来ようやくウィルコムが出す価値のあるハイエンド端末が登場することがあるのかも知れません。

ウィルコムはAtomプロセッサ搭載のWindowsVista機「WILLCOM D4(WS016SH)」などを発表していますが、WS015・WS017~WS020の型番がまだ発表されていないことなどもあり、5月26日の『ウィルコム、新製品と「次世代PHS」への取り組みについて記者会見』において何らかの発表があるのではないかとの期待も持たれています。
その時に発表される端末が従来のような端末なのか、あるいは登場が期待されつづけているハイエンド端末なのか、今まで以上に期待して見守りたいと思います。

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2件のコメント

  • ウィルコムがハイエンドを出しても売れるかどうかは値段次第?

    ウィルコムはハイエンド端末を販売できるのか(みどウィル移5/25)移転に記事を書きました。テーマは「ウィルコムはハイエンド端末出せるの…

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    ウィルコムの現端末、はっきり言ってWX330Kですらギリギリでミドルクラス というかローエンドかどうかの境界クラスの端末ですからねえ…
    少なくとも、ケータイ他キャリアではほぼ標準についているあたりは使えてほしいですが。
    ほんとに通常(ジャケットでも良いが)一機種だけでも
    ワンセグ・着うた・動画撮影と閲覧・Flash
    があると良さそうなのですがねえ。
    出来ればウィルコムの特徴を生かせるものとして
    VGAディスプレイとファイルビューア・(フルブラウザのため)・TV電話(ウィルコム間定額とか月額上限105円とかなら)・ストリーミング(動画難しいならせめてWebラジオだけでも)
    もあると良いなあとは思いますが。
    ちなみに GPSは、載せるならまず基地局情報にて充分、まずは緊急通報位置通知対応(他社ケータイではGPS無しが未だにたくさんある)、
    オサイフケータイはライセンス料が高いのであきらめるしかないかな…イーモバイルもそれで苦労しているとインタビューであったので

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