シンプルとフルサポート、どちらがお得か

今月4日にauが発表した2種類の新料金コース、いわゆる分離プランとなる「シンプルコース」と従来のインセンティブ方式を踏襲する「フルサポートコース」ですが、一般には「意味がないプラン」と見下げ果てられ、またIT系のメディアなどでも「総務省の意図したモノと違う」といった意見が出たり、シンプルコースとフルサポートコースの比較記事が載ったりと、シンプルコースの存在意義についての論議があちらこちらでなされています。
もっと平たく言うならば『シンプルコースは本当に安いのか?』、そういう論議があちこちでなされているわけです。

これについての答えは容易ではありません。
これまでの料金プランにおいてもプラン毎に基本料も違えば無料通話分も通話料自体までもが違っており、利用者の使い方次第でどれがお得かということは違ってくるため、判断が難しかったというのが正直なところです。
そのような部分も踏まえつつ、シンプルコースとフルサポートコースではパケット関係は同列のモノであるからそれについては一先ず考えないことにして、ポイントについても言ってしまうととんでもないことになるので見なかったことにした上で、基本料込みの月の通話料ベースで考えていきたいと思います。

ということで、今回フルサポートコース自体での実質2年縛りとなることから、「誰でも割」適用後のフルサポートコース主要プランとシンプルコースを比較して表を作ってみました。



さて、多くのブログやサイトでは「シンプルコースは意味がない」と言われていますが、月の通話時間が約44分までであればシンプルプランSは全てのプランより安く済むことがわかりました。待ち受けメインのユーザーにはメリットがありそうです。
また月の通話が290~500分と1400分を超える場合には、シンプルプランLが最安となることも判明しました。ある程度のメリットはあるようです。
それ以外の月累計通話分数ではフルサポートコースがお得ということもわかりましたが、この点については私は当然だと思っています。
というのもフルサポートコースは細かくプランが分かれており、対してシンプルコースは大きく違える2つのプランしかなく、その隙間をフルサポートのプランが埋めるだろことは想像に難くはなかったためです。

以上のように考えると、シンプルコースはユーザーの使い方次第では意外に悪くないプランと言えます。

と言いたいところですが、プランを見るだけではシンプルコースとフルサポートコースの真の姿は見えてはきません。
何故ならシンプルコースとフルサポートコースは端末購入時以外のプラン変更は不可能であり、またシンプルコースはフルサポートコースよりも2万円上乗せした価格で端末購入しなくてはならないからです。
つまり最初の表は、フルサポートコースで端末を購入して2年経過した後にどのプランにするかという時にしか意味をなさない物だったりするのです。

その辺りを考慮し、シンプルコースの基本料金に約833円(2万円÷24ヶ月)を加算した上で、2年使う前提という同じ土俵に立たせたのが次の表になります。

残念なことに、端末代を考慮するとシンプルプランSの存在意義が無くなってしまいました。現行わかっている範囲のプラン加入条件では、シンプルプランSは加入する意味がまったくないということになります。
またシンプルプランLが最安となるのも月の通話が346~420分と1559分を超える場合となっており、素直にプランLかプランLLを選んだ方が手っ取り早いという感が漂ってきます。
この辺りのことが一部のブログなど「意味がない」などと言われている理由なのでしょう。

しかし本当の問題はプラン自体ではありません。
プランとしてのシンプルコースを必要としているだろうユーザーの求める端末、それを提供できていない現在のラインナップそのものに問題があり、また現在のプラン加入条件の線引きそのものにも問題があるはずです。

シンプルプランSを基本料金として選びたいだろうユーザーは、自分から通話やメールやネットをすることがほとんどないユーザーであると思われます。
そのような人たちが求める端末は、通話にメールが出来れば十分なベーシックかつ、現状の端末群よりも更にリーズナブルな端末のはずです。例を上げるならばauのシンプルケータイSやウィルコムのpapipo!のような端末です。
そしてそのような端末にこそ、シンプルプランSは適しているプランと言えます。
それを満たせるならば、シンプルプランSはその魅力をいかんなく発揮できることでしょう。

また同じようなことがシンプルプランLについても同様のことが言えます。
ネットやメールを多用するようなユーザーであれば、フルサポートコースを選んだ方が端末価格的なことも考えるとお得になる可能性が高いからです。

線引きについても問題点が浮き彫りになっています。
今回の表でわかったように、シンプルコースがお得に見えない最も大きな理由は、端末購入がセットでないとプラン変更出来ない点です。
現在のプランであっても、1つの端末を2年以上使いつづけているようなユーザーのほとんどはインセンティブ回収が終了しているだろうことが想像できます。
その辺りを考慮し、1つの端末を長期利用しているユーザーについてはシンプルコースにプラン変更できるようにしなければ、シンプルコースはその真価を発揮するとは思えません。

今回は基本料金と通話料金をベースに、シンプルコースとフルサポートコースのどちらがお得なのかを考えてきましたが、その結論は期せずして前回書いた「auの新料金プラン、これからの課題」と同じところに着地しました。
シンプルコースを生かすも殺すも、auのこれから次第なのだということなのでしょう。

最後に、
一部ブログなどでは「分離プランなのに安くならないのはおかしい」という意見がありますが、それは多少論点が違えています。
分離プランはインセンティブ分を料金から分離することで実際の料金とインセ上乗せ分をはっきりとさせることを目的としており、基本料や通話料だけを見れば今までよりは安くなるだろう、という意味でしかありません。
したがって端末購入代金を含めた全体で見れば、それほど大きな開きが出ないことは当然の結果でしかありません。
またその前提には、全てを2年縛りにしてより大きな割引を受けられるインセンティブプラン「フルサポートコース」との比較は含まれていなかったはずです。だから2年の利用期間前提のフルサポートコースの方がお得になるのも当然なわけです。
ついでに言えば、携帯キャリアはインセンティブを廃止したくないわけですから、このような更なるインセンティブ優遇策も提示することは当たり前のことでしかないわけです。
その辺りをしっかりと理解した上で検討せねばならないことを言っておきたいですし、それ以上に分離プランを提言した当の本人である総務省側にもちゃんと理解していただきたい。

ちにみに、インセンティブ廃止については私も賛成の意見ではありますが、それは単純にインセンティブを分離してプランだけ提示すれば良いと言うモノではありません。
プランも端末も、そしてユーザーの理解度も、全てが揃わない限りは脱インセなどは実現しないのではないでしょうか、と私は考えます。

▼参考リンク▼
auの新料金プラン「シンプルコース」は本当におトク? 利用シーンを想定して料金を徹底検証!(デジタルARENA10/10)
au新料金に総務省が激怒(NBonlineニュースを斬る10/10)
au、通話料が安いか端末が安いか選べる「au買い方セレクト」発表(みどりうかブログ10/4)
auの新料金プラン、その狙いと仕組み(みどウィル移10/7)
auの新料金プラン、これからの課題(みどウィル移10/7)

1件のコメント

  • 別にシンプルコースがいつでも安いわけもないべさね

    シンプルとフルサポート、どちらがお得か(みどウィル移10/12)移転にauが11月12日から導入する「シンプルコース」と「フルサポートコース」についての記事を書いてみた。一見すると…

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