肉食について~イルカから考える人の食文化~ その3 続・イルカ漁の問題点とその方向性

さて、私がこの5つの中で一番問題と思っていることは、
「5.イルカ肉が汚染されていて食わない方が良いのに流通されている」であったりする。
ただ私が問題と思うのは、その汚染に対する姿勢についてである。

命とは何であろう。
立場や文化、宗教観や専攻によっても様々な見解があるだろうが、
私個人としてはは、命とは世界に対する離反であると思う。そして同時に地球生命という観念で言うならば、生き物は毒などを集めるための部品、でもあると考える。

世界は緩やかに平たくなろうとするのだ。
宇宙全体で見れば、地球という世界は異常極まりない特殊空間だ。宇宙の平均から突出して、高い圧力と気温があり、重い物質が存在し、平たくなろうとすることから逃れようとしているのだ。
宇宙の平均を例えるならば、砂場に作った砂山だ。
砂山は雨や風にうたれ、いずれは平坦な砂場に戻ってしまう。
これが私のいうところの、世界が平坦にになろうとしているということだ。

しかし生き物は違う、風に逆らい雨を凌ぎ、自分たちの形を作ろうとする、平坦にならないようにとあがいているのだ。
砂場で例えるならば、毎日毎日砂山を作っている子供のようなものだ。
平坦な砂場を望まず、自分の思い描く形=砂山になろうとする、あるいは作ろうとするのが生き物なのだ。
ただの水と炭素と他の元素の混ざったスープでなく、動き、育ち、息をし、食物を食べ、子孫を残そうとするのだ。

生き物はそれぞれ、自分たちのルールの中で生きている。
ミツバチの女王バチは自ら巣を作り卵を生み、やがて生まれた働きバチが幼虫や女王の世話をし食料を調達し、やがて新しい女王バチが生まれてあらたなを巣を作っていく。
サケは卵から生まれ海に出でる、やがて育ち大きくなって生まれた河川に戻り卵を産み命を終える。その海の恵で育った身体は、河川の生き物や流域の生物の糧となる。
サルは赤子で生まれ親に育てられ、やがて独り立ちして山で食料を探して生きる。大きく強くなったオスは群れのボスザルと戦い、時として敗れ命を落とし、時として勝利し群れのボスに治まり子を作る。
それぞれがそれぞれの環境で生きている。
すると、物質に偏りが生じるのだ。
小さなミジンコなどのタンパク質は少量だが、それが小魚に食われることでタンパク質がより高い密度で小魚に存在する。それを食した魚はさらに高い密度で、さらにそれを食べた大型生物はより高い密度でタンパク質をその身に集めていく。
それはタンパク質のみならず、様々な物質にも言えるのだ。
化学物質も然り、当然のように食物連鎖により濃縮されていくのだ。
それはあたかも、人の体内で病原菌を喰らい自ら命を断っていく白血球のようでもある。

そのように考える時、イルカが水銀などの化学物質により汚染されていることは、至極当然でしかない。何故なら彼等は、海の生態系の上位を占める強い生き物だからだ。
イルカ以外にも、生態系で上位に位置する生き物の汚染は高いレベルで進んでいる。マグロなどの大型魚類、水棲哺乳類、鳥類、そして最終的に人間にたどり着く、それはある意味では自然では当然の流れであるのだ。

ここで問題になるのは、その毒が自然界にあるものか、あるいは何かの要因で作り出されたものか、である。
それは言うまでもなく、人の作り出した化学物質であり、本来地上にはほとんど存在しない物質を地球内部から掘りだした結果である。
人による罪悪なのだ。

そのことを受け止めるならば、「5.イルカ肉が汚染されていて食わない方が良いのに流通されている」といったことは少し論点がズレていると言える。
イルカ肉などが高濃度に汚染されていることは、元は人の産業に端を発することである。
従って責めるべきは漁民などではなく、人類の現在の文明に対して、ではないだろうか。

昨今、イルカの不自然死の報告が少なくない。
さらには海ガメや水棲哺乳類などの変死報告も数多く存在している。
その原因の1つとされているのが、ビニール袋だ。
波間に漂うビニール袋をクラゲか魚と見間違い、イルカや海ガメが食べてしまうのだという。
その結果消化もされずに胃に残り、やがてエサを摂取出来なくなり死んでしまうのだ。

様々な問題を提起するのは悪いことではない。
しかし結果的に、私たち人間(特に先進国と呼ばれる日本を含む国々)の生活の犠牲になっているのだということ、それを忘れてはいけないのだと思う。
そのことを考える時、私達がまずすべきことは「ゴミのポイ捨てをやめる」という当たり前のことではないだろうか。
かわいそうだと言うことは簡単だ、でもその背後にあることから目を背けないこと、それが大事なのだと私は思う。

つづく

▼イルカシリーズ▼
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その0
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その1 イルカ漁は虐待行為か
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その2 イルカ漁の問題点とその方向性
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その3 続・イルカ漁の問題点とその方向性
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その4 高等生物とは何か
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その5 イルカの畜産生物としての適性について
肉食について~イルカから考える人の食文化~ その6 心と命

コメントを残す

%d