ウィルコムは本当に災害に強いのか?
3月11日の地震と津波によって、八戸にも甚大な被害が発生しました。
未だ燃料不足などにある八戸ではありますが、ウィルコムについて思うところがあり、少し考えてみたいと思います。
「ウィルコムは災害に強い」と、そう言われてきました。
ウィルコムPHSはドコモやauなどの携帯電話と方式が違い、1つの基地局でカバーする範囲が狭いマイクロセル方式を採用しています。マイクロセル方式であることでトラフィックが分散しやすく、多くのユーザーが利用していても携帯電話よりも繋がりやすい、という特徴があります。
また現在PHSキャリアはウィルコムだけですが、過去を振り返ってみてもウィルコムのPHS基地局はPHSとしては1基地局辺りのカバーエリアが広く、また基地局が自動で隣接する基地局と干渉しないように調整する機能を有しているために、1つの場所が幾つかの基地局のカバーエリアの範囲内にある、という特徴を有していました。
この特徴により、1つの基地局に障害が発生すると広範囲が一度に繋がらなくなりやすい携帯電話と違って、ウィルコムは災害時でも障害が発生した基地局のカバーエリアを周辺基地局が補うことで、災害発生時でも繋がりやすい性質を持っていました。
しかし今回の地震では発生直後から繋がらない状態が発生、被災地では地震発生直後に繋がっていた地域でも最長でも数時間程度で繋がらない状態に陥りました。
何故なのでしょうか?
まずは地震発生当日から情報を再整理し、私のウィルコム端末「ハイブリ(HYBRID W-ZERO3)」と子供のHONEY BEE3での電波状況の流れを再確認したいと思います。
3月11日午後2時46分頃 地震発生。私が思い違いをしていたようだが、最初の地震発生は午後2時20分頃ではなく、午後2時46分頃だったそうです。
この地震直後に実家にいた子供に電話、しかし繋がらない。ライトメールも当然無理。実家の固定電話も不通。家は停電。
津波警報が予想されたので沼館の実家向かうおうと家を出て車に、津波警報をラジオで確認。
車に乗った時点でハイブリが停波、「圏外」表示で電波自体が来ていないことを知る。子供のBEE3も停波。
その後夜になっても回線が回復しないため、情報収集のためにドコモ3G網開放。これが11日の20時ぐらい。たまに切れるが、最低限の情報を得る。
うちの家で停電が回復したのは12日の22時頃、うちでハイブリが回復したのは13日の6時頃です。
また知人の情報によると、一部では11日の16時~18時までウィルコムが繋がっていたエリアも八戸市内であったそうです。
これらの状況と東北全体がほぼ停電したこと情報を考慮すると、大規模停電でウィルコム基地局も多くがダウンし、一部電源設備がある基地局もその電源を使い果たしてダウンした、ということが類推できます。
では他のキャリアはどうだったかというと、あくまでユーザーに聞いた伝聞情報ですが、地震発生直後からドコモは通話が出来ない状態に、ネットはなんとか繋がる。auは通話不可能、通信もほぼ不可能。ソフトバンクは通話も通信も無理、という感じだったようです。
ハイブリはウィルコム以外にもいちおう3G通信できるわけですが(うちの場合はドコモのFOMA網)、ドコモの3G基地局は大型のモノも少なくなく、けっこう広い敷地にけっこうな大きさの付随設備が備わっているケースが八戸市内では多いです。その施設に非常用の発電設備などがあったのではないかと思われます。
それで通話は逼迫しすぎて使いものにならなくなるも、通信は何とか行えた感じなのでしょう。
auについては元々けっこう通信規制をしちゃう傾向があるので、当初から規制が強かったのではないかと個人的には考えています。
ソフトバンクについてはある意味論外で、平時から通信状況に余裕がなく、かつエリアが狭いために、非常時に対応するだけの余力が全くないがゆえの当然の結果だと思われます。
ある意味、これほどの広域災害が発生した際には、ケータイはほぼ使えないという答えなのでしょう。それこそ衛星携帯などじゃないと発生直後は無理、と言ってもいいと思います。八戸よりも被害が大きい地域では尚更です。
また八戸で唯一使えたドコモのデータ通信については、普段からエリア拡大や通信環境改善、トラフィックの分散に努めてきた結果が、今回如実に現れたと言っても良いと思います。災害状況次第ではドコモが一番頼れるかも知れないわけです。
しかしこれらの結果をもって「ウィルコムが災害に強いわけではない」というのは早計です。
何故なら、地震後八戸で最も早く通話が回復したのは、おそらくウィルコムだからです。
ウィルコムは電波が回復してすぐに、通話も回復しました。13日の朝のことです。ウィルコム同士もOK(相手先がが電波きていればね)。
とは言っても、他のキャリアや通信事業者のせいで、他へはほとんど繋がらなかったんですけどね。試しに家の固定電話(NTT東日本)に掛けてみたらKDDIのアナウンスで繋がりにくいと言われました。どういう経路なんだ。
しかし3Gキャリアの通話がなんとか出来るようになってきたのはキャリアによっても違うが14~15日頃からであり、なんとかまともに通話できるまでに回復するのにさらに数日を要しました。固定電話も似たような状況です。
つまりマイクロセル方式であることで、ウィルコムはやはり早期に通信が回復する可能性が高く、災害用通信機としての選擇肢に加える価値は十分あると言えるわけです。
もちろん災害発生時にはその状況により、ウィルコムだけが繋がりにくい状態が発生しないとも限りません。
大事なのは、災害時の通信網を確保するためには複数の選擇肢がある方が良いということであり、その中でのベストな選択肢は、ある意味ではドコモであり、またある意味ではウィルコムであるということなのだと思います。
あとこれは災害とは直接関係の無いことですが、「だれとでも定額」がとてもありがたかったです。
10分以内の通話が月に500回までとの制限があるとは言え、定額効果で心理的な負担もなくいろんな人に電話を掛けることが出来ています。
まぁ言うまでもなくこんな時なので通話料など気にしていられもせずに使うわけですが、それでも後日請求書にしっかりとその分が明記されるわけですよ。被災したらただでさえ出費がかさむのですから、その辺りはやはり安く抑えるに越したことはないです。
そう考えた時、私に撮っては今回の地震でウィルコムの「だれとでも定額」はとても強い味方になってくれたと言えます。
また各避難所にウィルコムがあったならば、避難してきた人の通信手段としても重宝することでしょう。
1回10分で月500回、仮に100人で使うとしても一人5回までは定額内に収めることも可能なわけです。
各自治体の非常回線を兼ねて、ウィルコム端末を幾つか所有しておくことも1つの方法かもしれません。
今回の地震で、正直初めてウィルコムが使えないという自体に遭遇しました。災害に強いウィルコムも状況次第では使えないということを、初めて実感したと言えます。
しかしその中でもウィルコムは携帯電話とは違う特徴を有するがゆえに携帯が使えない時でも利用可能であり、災害時にはウィルコムはやはり多くの人の力になれるのだと実感しております。
未だ復興には程遠い現状ではありますが、ウィルコムの可能性を選擇肢の1つとして検討し、復興や今後の災害などに活かして欲しいと思います。