正しい数字と間違った受け取り方
今の時代、ネットで少し調べるだけで多くの数字を知ることが出来ます。
ケータイに関しても例外ではなく、ちょっと検索するだけで各ケータイキャリアの契約者数やシェア、その月の純増数など様々な正確な数字を知ることが出来てしまいます。
しかし数字はあくまで数字でしかなくその意味をしっかり理解して受け取らねば本当の意味に気付かないばかりか、曲解することで本質とはかけ離れたイメージを生み出すこともありえます。
そうです、発信者次第で正しい数字も間違ったイメージを与えることが出来てしまうのです。
例えば今年に入って各キャリアが導入してきた音声定額や限定的音声定額、これらについても例外ではありません。
というのも、よく言われる『音声定額相手の数の理論』も、数字では正しいことを言っていますが、認識自体に大きな勘違いが含まれているからです。
一般ユーザー向けの音声定額と言えば、キャリア内完全音声定額制のウィルコム「ウィルコム定額プラン」とイー・モバイル「ケータイプラン」、キャリア内準音声定額制となるソフトバンクモバイル「ホワイトプラン」、家族限定音声定額制となるNTTドコモの「ファミ割MAX50」、auの「家族割」、ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族24」などがあります。
これらの音声定額相手先の数をあげると、3つの家族限定音声定額の相手先は最大9番号、「ケータイプラン」が最大約28万番号、「ウィルコム定額プラン」が最大約460万番号、「ホワイトプラン」が最大1804万番号となり、一見するとホワイトプランが最も音声定額の相手先の自由度としては優れているプランのように思われます(時間制限がありますがとりあえず考えなければね)。
これは数字上、とても正しいものです。
ただ現実問題として考えれば、まるで意味を成さない数字です。
何故なら、通常個人ユーザーが音声定額を必要とする相手は特定の相手であり、知らない誰かへの通話で音声定額の恩恵を受けることはまずないからです。
その辺りを冷静に考えるならば、自分の音声定額相手がどの範囲にいるかこそが判断材料となります。
もしその相手が家族であればドコモなりauなりソフトバンクなりの家族間音声定額で十分ということになりますし、それ以外で1時~21時しか通話をしないのであれば「ホワイトプラン」を選べば事足ります。
そして家族以外で24時間いつでも音声定額であることが好ましい相手ならば「ウィルコム定額プラン」か「ケータイプラン」を選べばよいということです。もちろん双方が使えるエリアにいることが前提条件となりますが、そこにはユーザー数や定額相手の数は直接関係しないわけです。
これらは数字の見せ方次第で受け取るイメージが違った結果であり、本質的な問題は安い印象を受けがちな980円などの値段ではなく、自分にとってどれがベストのサービスかでしかないわけで、そういう意味では自分の用途に合わせて選ぶという従来のプラン選びと何ら変わりがないわけです。
もう1つわかりやすい例で言えば、端末代金とケータイ料金の関係があります。
世間一般ではどうしても端末代金とケータイ料金は別物との概念がありますが、実際にはケータイに関しては端末代金とケータイ料金は表裏一体の関係にあり、どちらかを安くする代わりにもう片方を高くする、という価格設定が長年に渡って行われてきており、そのような価格設定は今でも続いております
去年まで一般的であったインセンティブ方式による端末販売などが、特にそれを象徴しているものです。
従来の日本のケータイは海外に比べ、端末代金が非常に安いのにケータイ料金が高い状態にありました。しかも海外よりも高性能な端末が日本では安く売られていた、という現状もあったわけです。
これは日本のケータイキャリアが端末を安く売る代わりに店舗の赤字分+利益分をケータイキャリアがインセンティブ(販売奨励金)として支払い、そのインセンティブ分をケータイ料金に端末販売に上乗せして回収しているために起こった現象です。
とするならば、本当のケータイ料金を考える上ではケータイ料金と端末価格を別個に考えてはいけなかった、ということになります。
この状況は昨年末頃から始まった俗に言うところに「分離プラン」によって多少は改善されていますが、しかし通話料金やパケット料金の設定は依然としてインセンティブ方式のモノが継承されており、その意味では現在もケータイ料金は端末代金までを含めて考えねば本当の料金は見えてこないと言えるでしょう。
また一部キャリアではケータイの基本料金をかなり低く設定し、端末価格を本来以上に上乗せしているという『逆インセンティブ方式』と言われるような手法をとっていたりもします。
ただこの状態もまた、ケータイ料金に端末代金を加味して考えねば本当の料金は見えてこない、という考えに反するものではありません。
ではケータイ料金のみの比較は無意味なのでしょうか?
というと、けしてそんなことはありません。
端末代金を支払いきった状態での比較では、単純にケータイ料金を比較したもので問題ないからです。
現在の端末販売方式では、端末あるいはプランに対しての実質的な2年契約が必須であると言えます。
とするならば、新たに端末を購入してからその端末の支払いが終了するまでの約2年間(ソフトバンクのみ26ヶ月)はケータイ料金に端末代金を足したものでの比較が正しい比較であり、ケータイ料金のみの比較は2年間使い続けた後の比較にしか適さないと言えるのです。
このように考えると個人で家族契約無しで端末を購入した時の各キャリアの代表的な月の支払い額(Eメール使用を前提として)は、NTTドコモの905iが3465円(タイプSSバリュー1050円+端末代2100円+iモード基本料315円)、auの0円端末が2205円(プランSS1890円+端末代0円+EZweb基本料315円)」、ソフトバンクモバイルで賦払金3200円の端末を購入した場合が3275円(ホワイトプラン980円+Wホワイト980円+S!ベーシックパック315円+端末代金1000円)、ウィルコムの最新端末WX330Kで3300円(ウィルコム定額プラン2900円+端末代金400円)となり、端末購入から2年間での支払額はauが最安、それ以外のキャリアは差がないということが正しい比較となります。
これが2年間の支払いを終えて同じ端末を使い続けるという前提であれば、NTTドコモが1365円、auが2205円、ソフトバンクモバイルが2275円、ウィルコムが2900円ということになります。
この辺りの小さな認識の差が、実は本質を大きく違えて見せる要因ともなるわけです。
今の時代、ネットで少し調べるだけで多くの数字を知ることが出来ます。
しかしそれは見る角度を変えるだけで全く違った意味のように見えてしまうモノであり、一部のケータイキャリアに至っては故意にそのように見えるような表現ばかりをとっていたりもします。
そして恐ろしいことに今の時代は2年契約が前提となっているため、とりあえずあるいは気付かずに契約した場合でも高い実質的な解約料の存在などで2年間使い続けることになりがちで、以前ほど気軽にキャリアを変更できない時代になりつつあります。
ユーザーが自らのケータイ環境を快適にするためには、一部の偏った見せ方や一部キャリアの有利な部分だけを強調した宣伝を鵜呑みにせずに正しい情報を正しく認識する必要がある時代になってきているのではないでしょうか。
境界線は端末購入から2年経過しているか否かだと思いませんか?
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