auの新料金プラン、これからの課題

前回

auが発表した俗に言う分離プランである「シンプルコース」、その詳細は非常によく練り込まれたモノであり、現状非の打ちようがないようにも感じます。
しかし冷静に考えると、まだ幾つかの問題点が存在していることに気付くでしょう。

シンプルコースは1つの端末を長く使いつづけるつもりのユーザーにとって、たしかに魅力的なプランと映るかも知れません。仮に端末代が2万円高くなるとしてもです。
でも冷静に考えてみましょう。
シンプルコースは新規もしくは機種変でしか契約できません。
既に長い期間1つの端末を使いつづけている人はプラン変更できないのです。


例えば既に同じ端末を3年間利用しているauユーザーがいたとしましょう。
その人がシンプルコースを利用する為には、とりあえず機種変更をしないといけないことになります。

新しい料金プランを利用するためのこの条件は、おそらくは短期解約ユーザーなどへの対策だったのでしょう。
しかしそれは同時に、1つの端末を長い期間大事に利用してきたユーザーにも足かせをするモノでもあります。

せっかくのシンプルコースも、今までそれを望んでいただろう人たちが躊躇するような条件があってはその意義が半減してしまいます。
ユーザーのことを考えるのであれば、2年以上1つの端末を使いつづけているような長期利用ユーザーにもシンプルコースを選べるように改定も必要ではないでしょうか。

また大局的に見た場合、シンプルコース自体にはほぼ問題はないと言えるとしても、もっと根本的な問題が横たわっていることに気がつきます。

端末価格が高いのです。

携帯の端末価格が高い理由には、開発がインセンティブ前提だという部分があります。
本来物の価格というものは、購入者のニーズによっても決められる物であり、その製品の価値に見合っただけの価格であるかどうかが重要な価格設定要素の1つであるわけです。
しかしインセンティブが存在すると、その価値に見合った価格+インセンティブ分まで原価を上げることが可能になります。
その結果、全ての人が必ずしも使うとは限らない機能でもとりあえず開発してしまう流れができてしまったのです。
そうです、多くのケータイユーザーはインセンティブ上乗せ分で回収できるからという理由で、必要のない機能まで詰め込まれた端末を買わされているのです。
この辺りが携帯キャリアが脱インセに抵抗する部分であり、携帯キャリアの言う「携帯の進化にインセンティブが貢献してきた」という部分でもあります。多くのユーザーが知らないうちにキャリアに貢いでいたということはノータッチのままでね。

しかしシンプルコースは脱インセ方式の分離プランですので、インセンティブ前提で開発された端末では当然かなり割高になります。
まぁ携帯キャリアにすれば「だから言ったでしょ、インセンティブありの方がユーザーのためんですよ」と言い張る口実になるでしょうが、実際には作ろうと思えば3万円でも2万円でもケータイを作ることは不可能ではありません。
事実として、ケータイキャリアでもっともインセンティブが少ないウィルコムの端末は、通常音声端末は原価3万円程度で作られています。原価3万円でもフルブラウザ搭載端末を作るぐらいはできるのです。
また携帯キャリアの端末の場合には、みんなが必要としているわけではないテレビ電話や高画素デジカメ、PTTやワンセグなどがかなりの確立で搭載されており、その機能を省いて「通話・メール・ネット」というベーシックな機能を押さえたシンプルな端末さえ作っていけば、3万円で端末を作ることはもちろん、努力次第ではもっと安い端末さえ誕生することでしょう。
この辺りの低廉な端末のラインナップがまだなされていないこと、それが大局的に見た時のもう1つの課題です。

このことについてはKDDI取締役執行役員常務コンシューマ事業統轄本部長の高橋誠氏が「低価格・低コスト端末を充実していく」などと語っていることからも明白です。
ただそのラインナップを揃えるにはまだしばらく時間が必要と考えられ、本当の意味でのシンプルコースの選択肢が登場するまでには今しばらく時間がかかるように思われます。

auのシンプルコース、その登場は日本のケータイ業界に新しい流れを作り出すでしょう。
しかしその流れが本物となるか、あるいは一時的なもので再びインセンティブ方式に一本化されるのかについては、ユーザーの選択次第だということも忘れてはいけません。
間接的にせよ、私達の選択がケータイキャリアの方針を作り上げていくのですから。

▼参考リンク▼
ドコモ、GPS機能搭載の「らくらくホンIV」(ケータイWatch7/12)
au、通話料が安いか端末が安いか選べる「au買い方セレクト」発表(みどりうかブログ10/4)
「au買い方セレクト」の提供について ~多様化するお客様のニーズに合わせ、au電話の購入方法を選択可能に~(KDDIニュースリリース10/4)
「au買い方セレクト」の提供について〈別紙〉(KDDIニュースリリース10/4)

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