auの新料金プラン、その狙いと仕組み

auが俗に言う分離プランとなる「シンプルコース」の2つのプラン、「シンプルプランS(月1050円)」と「シンプルプランL(月2625円)」を発表しました。
また同時に、従来のプランを基本的に踏襲した「フルサポートコース」も発表されました。

日本のケータイ端末の本来の価格は2~8万円と非常に高価であり、実際の店頭価格よりも仕入れ値の方がはるかに高額だったりします。
したがってケータイ販売店はお客に端末を販売しただけでは赤字を被ってしまうわけですが、それでもケータイ販売店の商売が成り立っているのは、インセンティブと呼ばれる販売奨励金の存在があるからなのです。
つまりインセンティブがあるから販売店は赤字価格(1円ケータイなど)でもケータイを売ることが出来、キャリアからのインセンティブを受け取ることで利益を得る形で商売が成り立っているわけです。

ではそのインセンティブという販売奨励金はどこから出てくるのでしょうか?
実はインセンティブはケータイ利用者の基本料金や通話料金などのケータイ料金に上乗せされて徴収されているのです。

しかしその事実を知るユーザーは少なく、しかも1つの端末の利用期間や月のケータイ代によってインセンティブ回収分に大きな個人差が出てきたことなどが問題視されていました。
そのインセンティブ回収分を料金から分離してわかりやすくしてユーザーにも認知してもらおう、というのがいわゆる『分離プラン』であり、今回のauの新料金プランはその分離プランに対応した料金プランとなるわけです。

しかしそのプラン内容をよくよく見てみると単なる分離プラン提示にはとどまらず、auの巧妙な線引きが見えてきます。
auが発表した新しい料金プラン、「シンプルコース」と「フルサポートコース」とはいったいどんな存在なのでしょうか?

シンプルコースの2つのプランは、おそらく本当にほぼインセンティブ相当分を排除しているのだと思います。少なくとも基本料や通話料に限ってはそう言っても過言ではないでしょう、それぐらい安いプランです(多少の調整や思惑はあるでしょうが)。
しかしその為の条件付けは、端末価格に2万円上乗せという当然のことだけではなく、求書の封書での発行が有料になっていたり、パケット料は従来プランと同額であるなど、基本料と通話料以外の部分ではなかなか抜け目がない細かな設定を施しています。

さらにシンプルコースへのプラン変更は新規もしくは機種変時の端末購入の際に限られており、端末購入をしないでのプラン変更する唯一の方法もフルサポートコースを契約した上での2年縛り終了後という条件があり、いずれにしても端末を購入しなくては新料金プランへは変更できない状態にあります。
おそらくこれは、旧来の料金プランを利用している人がいきなりシンプルコースなどに変更できないように、との配慮の結果なのでしょう。プラン変更のみでも可能とすれば、新料金プラン改定前に契約しておいてシンプルコースに鞍替えする、ということもできますからね。

このことを言い換えるならば、
『新料金プランの恩恵を受ける為には端末を買って新料金へ加入しろ、旧料金プラン時代に買った端末は違う前提の上で販売してあるので新料金プランには無関係だ』
ということです。

まぁたしかに一理ありますが、その辺りをしっかりすることで短期機種変ユーザーなどが得する道を塞いだわけです。この判断は分離プランなどを導入する際には、小さいけれども非常に重要な点です。

さらにこれらのことを留意しつつフルサポートコースと新しいポイント制度を見てみると、なるほど良くできていると気が付きます。
短期解約ユーザーにとってはフルサポートコースは実質解約手数料の値上げに近いですし、基本料や通話料や通信料を多く払っている(インセ相当分も多く払っている)ヘビーユーザーにとってはポイントを増額して実質優遇しているわけで、ヘビーユーザーは多く支払っただけ2年よりも早い時期に実質解約手数料0円になる、上手く制度を利用さえすれば今までよりもはるかに不公平がなくケータイを利用できるわけです。

加えて言うならば、
auはこのプラン実現の為にケータイ端末開発の基本部分の統一を進めてきており、それらの取り組みによってドコモやソフトバンクモバイルよりは低いインセンティブを実現してきたと言われています。
その取り組みがあったからこそわずか2万円の上乗せだけでこれらのプランを実現できた、という背景も見え隠れしています。ドコモが同様のプランを投入するとしても、丸写しで2万円上乗せというのは難しいかも知れません。

こうしてみるとauの「フルサポートコース」と「シンプルコース」は、ユーザーにしてみれば自分の利用状況に合わせて不公平なく還元され、auとしては今までよりもより利用状況に関する収益予測や対応がしやすくなる、と、なかなか考えられた妙案とも思えます。
しかもこのプランには、ソフトバンクモバイルのホワイトプラン+新スーパーボーナスのような隠し要素がありません。現状考えられる限り真っ当な理由で理詰めされており、プラン的には非の打ち所がありません。

けれども販売方式を含めた全体で見渡した場合には、新料金プランにも問題点がまったくないわけでもありません。
それらについて、auはどのような対応をしなくてはならないのでしょうか。

次回へつづく>

▼参考リンク▼
au、通話料が安いか端末が安いか選べる「au買い方セレクト」発表(みどりうかブログ10/4)
「au買い方セレクト」の提供について ~多様化するお客様のニーズに合わせ、au電話の購入方法を選択可能に~(KDDIニュースリリース10/4)
「au買い方セレクト」の提供について〈別紙〉(KDDIニュースリリース10/4)

1件のコメント

  • うまいね、au。

    auの新料金プラン、その狙いと仕組み(みどウィル移10/7)支店が移転にauの新料金プランについての記事を書いてみた。というか、ホントにauうまいな、と思ったのよね。そんな気持ちを…

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