「京ぽん」と「音声定額」

★この記事は1つのご提案10月後半のお題「キセキ」を受けての記事になります。★
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現在ウィルコムは全国でサービス提供をしている唯一のPHSキャリアであり、また技術的なバックボーンをもった本当の音声定額プランを一般に提供している国内唯一のケータイキャリアです。
今でこそウィルコムは毎月安定した純増を繰り返し、またウィルコム最もユーザー満足度が高いケータイキャリアとして存在しています(auが宣伝でNO1を謳っていますが、あれは携帯電話限定での調査結果でウィルコムは除外されています)。
しかしウィルコムはその前身であるDDIポケット時代に、苦難の時代を経験しています。
その苦難の時代を乗り越えられたこと、それは見かけだけではない本当のサービスを提供し続けてきたからです。

かつて日本にはピッチブームが存在しました。
95年に誕生した3つのPHSキャリア、「NNTパーソナル」「DDIポケット」「アステル」当時の携帯よりも圧倒的に安い料金(携帯が通話料3分120円時代にPHSは3分40円だった)と端末価格の安さ(携帯が数万円の時代に数千円で購入可能だった)、そして高額の新規加入料が要らないなどの理由により人気を得、90年代後半には女子高生などの間でPHSが「ピッチ」愛称でブームになるというPHSの黄金時代を築き上げました。そのピーク時にはPHS全体で700万を超える契約者数があったことは、今の多くの人には信じられないことでしょう。
またその中でもDDIポケットは独自の進化を進め、日本初のショートメールサービス「Pメール」を1996年に、さらに多くの文字を送れEメールも扱える「PメールDX」の提供を1998年に始めるなど革新的なサービスを次々と打ち出していき、その結果ウィルコムの前身であるDDIポケットは1998年8月に360万加入者を実現することができたのです。

しかしここから時代は一気にPHS冷遇へと変化します。
PHSの雄であったはずのNTTパーソナルがNTTドコモに営業を譲渡、ドコモの方針によりFOMAが充実するまでのデータ通信のつなぎ程度の扱いをうけてサービス停止へのレールが敷かれてしまいます。
アステルはというと経営難から会社の身売りが頻発、急速にユーザー数を落していくこととなります。
さらに携帯電話の通話料値下げの影響もあり、「PHSは安いけど繋がらない」「少し高くても携帯の方が使える」というイメージがこの次期に植付けられました。

またこの時期にはDDIポケットは高速ハンドオーバーなどのPHSの弱点を補う新技術を開発投入しサービス充実をはかってきたのですが、他PHSキャリアが件の理由によりそれらの技術開発が難しかったこともあり、PHSへの悪いイメージを拭うことはかなわなかったのです。

そして敵は身内にも現れます、それは他ならぬ親会社のKDDIです。
KDDIは傘下に幾つものケータイキャリアを有していました。携帯電話のau、PDC携帯のツーカー、そしてPHSキャリアであるDDIポケットです。
KDDIはその中でもauに特に注力し3Gへの移行を促進、ツーカーには安くてシンプルな形を求め、DDIポケットにはauの邪魔にならないようにと端末開発やプランの設定へと笑顔で圧力を掛けていたということが後にわかっています。

しかしDDIポケットはそこで諦めずにデータ通信の「AirH”」を2001年6月に開発、同年8月には日本初の定額制モバイルデータ通信「AirH”つなぎ放題」を投入、翌2002年3月には「AirH”128Kbps通信」を実現し、2004年4月にはAirH”100万台突破と、親会社からの圧力の中でも自らの進化を諦めず道を切り開いて行ったのです。

そして2004年5月、日本初のフルブザウザ搭載ケータイ端末「AH-K3001V」、通称「京ぽん」が発売されました。
依然として続く強い締め付けの中で高い開発費を掛けられぬまま誕生した京ぽん、そのハードとしての性能は当時の携帯と比べても明らかに低いものだったはずでした。
しかしDDIポケットが諦めなかった結果生まれた「パケット定額制」とPCサイトを閲覧できるフルブラウザ「Opera」の搭載により、京ぽんは従来のケータイとはまったく異なる存在と成ることができたのです。
その自由度は非常に高く、多くの普通のインターネットサイトを利用でき、また工夫次第で今までケータイにできなかった様々なことができるようになりました。
それはひとえに、DDIポケットを愛して使い続けてきたユーザーと、それに応えようと諦めずに開発を行ってきたDDIポケットの努力の生み出した奇跡、その奇跡の結晶が正に京ぽんであると言っても過言ではありません。

その後DDIポケットは外資のカーライルが筆頭株主になりKDDIグループから離脱、2005年2月には社名をウィルコムに変更し、同年5月には国内初の音声定額制サービス「ウィルコム定額プラン」の提供を開始しました。
その「ウィルコム定額プラン」は様々な技術的に裏づけされた無理なく提供できる本当の音声定額プランであり、その技術は苦難の時代に諦めずに開発し続けてきた技術を応用して作られたものだったのです。
そうです、「ウィルコム定額プラン」もまたDDIポケットが諦めずに掴み取った奇跡の結晶の1つなのです。

昨今は携帯キャリアにおいても、ウィルコムが日本で初めて実現したサービスと同様のモノが数多く提供されています。
しかしそれらの全てがウィルコムのように技術に裏づけされたものとは限らず、また中には技術的にはタブーなことをとりあえず提供し、いずれ破綻するであろうことが予想されるキャリアも存在しています。
けれどもそれはいずれメッキが剥がれることでしょう、本当の奇跡は本当に努力した上でなければ結実しないのだと、私はウィルコムの歴史をみて知っているからです。
願わくばウィルコムにはこれからも進化の歩みを止めずに、またいつか新たなる奇跡の結晶を送り出して欲しい、そう期待しています。

▼参考リンク▼
続・PHSの10年と今後-ウィルコムインタビュー「今後のPHSは拡大と成長へ」(PC View)

4件のコメント

  • ドラマ「命の奇跡」見ましたか?

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