何故FOMAのデータ通信はつながったのか?

地震が発生した11日の夜、八戸市内では多くのケータイが使えない状態が発生しました。
災害に強いウィルコムさえも東北ほぼ全域での停電の影響などもあり停波、他のキャリアも通話はもちろんつながらず、メールやネットなどのデータ通信も利用しにくい状況が発生していました。
そんな中、ドコモのFOMAのデータ通信だけは利用できた、という話を多く耳にしています。
まだまだ八戸市内でも被災の爪痕が大きく残っているわけですが、今後のためにも少しその辺りを考えていきたいと思います。

地震発生後にケータイが繋がりにくくなる理由は主に2つです。
「基地局の停波」と「トラフィックの増大」です。

今回は地震による直接の影響というよりも、停電による電力供給停止での基地局停止や、津波被害による基地局等の破損及び喪失などで通信障害発生、ということが多く発生していたと思われます。

「基地局の停波」の停波については、ある意味ではどうしようもない部分もあります。
物理的に破損したら修理するしかないですし、また予備電源施設についても限界があるわけで、これについては電波が届く場所を見つける以外にありません。

それよりも問題は「トラフィックの増大」です。

 
地震などが発生すると、どうしても安否確認のための通信が増えます。
その際にはデータ通信よりも通話の方がより大きい影響を受けます。
そこでケータイ各社はそれぞれの方法で通信のトラフィック分散を行っています。

ウィルコムは1つの基地局のカバーエリアが狭いマイクロセル方式であり、多くの基地局を設置することによってトラフィックを分散しています。またマイクロセル方式はデータ通信だけでなく、通話も比較的繋がりやすい方式です。
八戸市でのウィルコムが今回の地震後に広域で使えなくなったにも関わらず、電気が回復してからは早期に基地局との通信を回復し、回復後には繋がりにくい状況はウィルコム網内ではほとんどなかったのはこの辺りの理由からでしょう。
ある意味災害に強いウィルコム、と言えます。まぁ別に災害に強くするためのマイクロセルではないのですがね。

対して携帯電話は、1つの基地局で広範囲をカバーするマクロセルです。
マクロセルはトラフィック増の影響を受け易いですが、広範囲をカバーできるので生きている基地局があれば繋がる可能性があります。
ですがこの時、通話はまず繋がりません。
何故なら通話は、使用中は電波をずっとつかんだままで占有してしまうからです。
その為に携帯キャリアは、トラフィック増大が予想される時には通信規制を掛けます。今回もドコモ、au、ソフトバンクには通信規制が掛かりました。
仮に80%規制が掛かったとしても、それは自キャリア内での話。その上で相手方と繋がりにくいんですから、通話はまず繋がらないということになります。

ではデータ通信はどうでしょうか?
データ通信については通話より繋がる可能性が高いと言えます。

3G携帯のデータ通信は高速化しています。理論値で数Mbpsという高速通信を可能としています。
高速で通信するということは、短い時間で通信が終了するということです。
ですからライブ配信のように断続的に通信するモノは除くにしても、メールやネット閲覧などは地震後でも利用出来る可能性が高いと言えるわけです。アクセス過多で利用できない、あるいは遅延するケースは出てくるでしょうが。

とすると、ドコモとau、ソフトバンクの差はなんだったのでしょうか?
それはおそらく、3Gでの通信可能エリアの差と実質的な通信速度の差、さらには高トラフィックに耐えられるだけの実質的なエリア展開が出来ていたかどうか、ということに思われます。

3Gにおいて、ドコモのFOMAのエリアは日本一ですし、また高速通信が可能なエリアも最も広く存在します。
ソフトバンクなどは何かにつけエリアの広さを主張しますが、所詮口だけです。事実として、ソフトバンクはトラフィック分散に公衆無線LANを多用しておりますが、今回のような広域停電や通信網の寸断が発生した場合には機能しない公衆無線LANも発生します。
ある意味リスク分散としてのWi-Fi接続機能は必要に思いますが、本業である3G通信を楽にするためだけのWi-Fiでは本来の意味を成さない、ということが露呈した結果と言えるでしょう。

以上のように考えていくと、地震発生直後に八戸市内ではドコモのFOMAのデータ通信だけは辛うじて使えたということは、とても納得のいく結果です。
ですがそのFOMAのでさえ、運が悪ければ使えない状況も発生した可能性は否めません。
そんな中で被災者の一番の力となっているものは、実は地元のラジオ局だったりします。

八戸市でも地元のコミュニティFM『BeFM』が市民の力となってくれました。外部電源を必要とせず消費電力の少ない機器が多いラジオ、そしてリアルタイムでの情報配信としてのラジオ放送、そんな旧来のメディアが、最新のITの申し子とも言える現在のケータイよりも使えたという事実を、我々は忘れてはなりません。

今回の地震を機に、今一度ケータイの在り方を考えると同時に、ケータイはけして万能ではないということをもっと理解していく必要があるのではないでしょうか。

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