幻の音声定額IP電話「MobdeM」

この記事はみどウィル支に投稿した記事の再掲載です。

ウィルコムが今年5月から開始した音声定額プランの「ウィルコム定額プラン」、その影響は大きくボーダフォンは身を削る覚悟で指定先限定オプションプラン「家族通話定額」「LOVE定額」で後追い、さらにドコモはPTT「プッシュトーク」を発表し、auはPTT「Hello Messenger」と携帯キャリアも新プランを打ち出すに至りました。

しかしながら依然として「本当に音声定額になるの?」「途中で内容が変わるんじゃないの?」という疑念の声も残っています。
そう思われてしまう理由は幾つかあります。
携帯の料金が高いことからそんなことはない、との思い込みやボーダフォンが過去に起した改悪の歴史などがそうなのですが、もう1つ、忘れてはならない事件がもしかしたら影響しているのかも知れません。

その事件とは2002年にジャパンメディアネットワークが発表した音声定額IP電話「MobdeM」とその詐欺疑惑のことです。

2002年末、ジャパンメディアネットワークはドコモのPDC端末(MOVA)に専用端末「MobdeM」を差し込むだけで携帯電話をIP電話化して通話料金を定額にする、というサービスを発表した。

この発表は当初から説明不足で、実現不可能との声も多かった。
というのも、基本的に音声定額を実現する為には、発信側と受信側が双方で音声定額対応である必要があるからだ。
IP電話も然り、同時業者への通話、あるいは提携している事業者への通話は定額になっても、それ以外の事業者のIP電話にかける場合には料金が発生する。
ウィルコムも同様、現在ウィルコム間でしか音声定額は実現しておらず、将来的にも音声定額が実現可能なIP電話との提携までしか対応できないと思われる。
つまり、発信側が一方的に音声定額にすると言って音声定額になるものではないのだ。

また「MobdeM」についての説明もなかった。
何故PDCに差すだけでIP電話化するのか、その部分に付いての技術的な説明などがなかった為に、ネットでも否定派肯定派が論争を繰り広げるにまで至った。
その後ジャパンメディアネットワークは、複数ユーザーから数万円単位の初期費用を集めながらもサービスも提供できぬままに自己破産をすることとなる。

この事件はテレビでも報道されたので覚えてる人もいるかも知れない。
もしかしたら今音声定額に否定的な人は、この報道のイメージをもっているのではないだろうか?

誤解の無いように言っておくが、この事件はある会社のいわば詐欺事件であり、音声定額が実現可能かとはまた別問題だ。
IP電話での音声定額化は、通信網の問題さえ解決すれば実現可能な技術である。
またウィルコムの音声定額は、NTTグループに依存する仕組みから見直すことで実現可能になったサービスである。

これらのことを踏まえた上で、自分に合ったケータイ選びの選択肢の1つとして。ウィルコム定額プランや各社の音声定額、PTTがあるのだと理解すれば、今よりもっと自分にあったものが探し出せるのではないだろうか、とそう思うのだ。

▼参考リンク▼
堕ちたIPモバイル電話――JMネットの“闇”(ITmedia+Dモバイル)
ジャパンメディアネットワークが自己破産(ITmedia+Dモバイル)
偽の携帯計画、社内で虚偽の説明・手配容疑者の腹心幹部(ITPLUS)
モバイルIP電話の可能性を探る(ITmedia+Dモバイル)

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