速度約1.6倍、高度化PHS「W-OAM」とは何か?

この記事はみどウィル支に投稿した記事の再掲載です。

低料金と安定した通信品質が特徴のウィルコムが、現状よりも速い速度での通信サービスを提供すると発表しました。
高度化PHS「W-OAM」がそれです。
これは昨日お伝えした1xの速度が実質倍になる話とはまた別物です。
高度化PHS「W-OAM」とは一体どういうものなのでしょうか?

高度化PHS「W-OAM」とは、BPSKと8PSKと呼ばれる2つの新しい変調方式も併せて使う事が可能な新しいPHSサービスです。
現在のウィルコムPHSで使われている変調方式はQPSKと呼ばれる方式であり、通信速度は32kbps(理論値)となっています。
これに新たな2つの変調方式、BPSK(理論値13kbps)と8PSK(理論値51kbps)を加え、電波の状態に応じ最適な変調方式を自動的に選択することによって、さらに高速かつ安定した通信を実現するのが高度化PHS「W-OAM」というサービスです。

さらに変調方式の違いによってどのような差があるか、をお話します。

BPSK(理論値13kbps)は現在ウィルコムPHSで使われているQPSK(32kbps)よりも速度が遅い変調方式です。
しかしながらこのBPSKにすることで、1本のアンテナから発する電波の到達距離が従来のQPSKよりも長くなり、結果的に従来は電波の届かないアンテナから離れた位置までのより広いエリアをカバーすることができます。
逆に8PSK(理論値51kbps)はQPSK(32kbps)よりも速度は速いものの、アンテナに近いエリアでしか安定した通信ができません。

つまり、アンテナに近いエリアでは自動的に8PSKに切り替わるで高速通信を可能にし、従来電波が安定して届かないアンテナから遠いエリアにいる時には自動的にBPSKに切り替わり安定通信を実現する、ということです。

1x4x8x速度電波到達距離
BPSK13kbos52kbps104kbps↑遅い
 
↓早い
↑遠くまで届く
 
↓近くしか届かない
QPSK32kbps128kbps256kbps
8PSK51kbps204kbps408kbps

この新しい変調方式についても従来同様、「1x」「4x」「8x」での通信が可能になります。
つまり高度化PHS「W-OAM」になることで8x時には最大408kbps(理論値)、従来の約1.6倍の速度が出ることになります。

一見すれば単なる速度が上がっただけのサービスに見えますが、実のところその一番のメリットは、状況によって通信方式が変更できる点にあるのだと思います。
例えば8回線を利用して通信する8x通信時、そのアンテナ全てが近いところとは限らないわけです。
その時に接続可能なアンテナ(回線)が、端末から50mに1本、200mに2本、500mに4本、1kmに1本、などという状況も当然あるわけです。
とするならば、8PSKでの高速通信が可能なアンテナには8PSK接続を、QPSKで安定しているところではQPSKで接続、遠くて安定しないアンテナにはBPSKで接続、という形で、より安定して高速な通信を実現する、ということも可能なわけです。

これこそが高度化PHSと銘打っている辺りであり、今後のさらに早い16QAM(理論値64kbps)や64QAM(理論値96kbps)への第一段階と言えるのだと思います。
また更には数十Mbpsレベルのデータ伝送速度を実現する「次世代PHS」の開発も行っていく予定だそうです。

では現状の端末で「W-OAM」が利用できるか、と言えば、残念ながらそれはかないません。
利用に当たっては対応端末が必要であり、現状データ専用の3機種のみ発表されています。
しかしながら今後は当然音声端末の開発なども行い、順次対応していくものと思います。
またアンテナも「W-OAM」対応の必要があるため、当初は首都圏などでのエリア展開となるようですが、FOMAのように2G(MOVA)と互換性がないというものではありませんので、「W-OAM」対応エリア外では従来どおりの通信が可能となっています。
料金については、どの変調方式であっても価格は変わらないそうです。

いよいよ始まったウィルコムの回線速度高速化、それは一見すればドコモやauの3Gのようにも見えるかも知れません。
しかしウィルコムはマイクロセル方式のPHSを基本としたキャリアであり、今後もユーザーの為に安価で安定した高品質通信を実現してくれるはずです。
今年もウィルコムは本当の意味でのネットとの融合を推し進めてくれるものと期待して間違いなさそうです。

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▼参考リンク▼
ますます速く快適に(ウィルコム公式サイト)
2006年のウィルコムは「ADVANCED & COMFORTABLE」(ケータイWatch1/27)
「W-OAM」対応の新データ通信カード3機種(ITmedia+Dモバイル1/27)
料金据え置きで通信速度を3倍に――ウィルコム(ITmedia+Dモバイル1/27)
ウィルコム,2月下旬にデータ通信速度を最大408kビット/秒へ高速化(ITPro1/27)
データ通信サービスの高速・快適化について~PHS高度化通信規格「W-OAM」の導入~(ウィルコム公式サイトプレスリリース1/27)
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