脱自動車論~バス活性化のための生活変換の提案~

八戸のコミュニティFM「BeFM」では現在、路線バスを利用しようという旨のCMを流しています。
私が確認しているのは2パターン、
『バスを移動手段としている人がいる。普段バスに乗らない人が少しでもバスを利用するとバスが元気になる』
『車を所有しているとなんだかんだで1日1000円以上掛かる。でもバスなら上限300円!だからたまにはバスに乗ろう』

というものだ。

前者は素晴らしいと思う。学生やお年寄りだけでなく、病気や怪我など様々な理由で自分で車を所有できない人が存在する。いわゆる交通弱者だ。
それらの人にとってはバスや鉄道などの公共交通は大切な移動手段であり、近くの商店がほとんどなくなった現代の八戸においては買い物のために遠出することを考えた時、公共交通欠かせない存在である。
だから「その人たちのためにもバスを利用する機会を増やしてバスを応援しよう」という旨の内容には合点がいくし、これなら車を運転している人にも納得してもらえると思う。

しかし後者はズルイ比較だ。もっと言えばウソの誇大広告と言ってもいい。何故なら幾つもの数字の誤魔化しがあるからだ。
数字の誤魔化しといっても数字が間違っているということではない。比較の為の土台が違う、と言っているのだ。

100リットルの水と100000立方cmの水、どちらが多いだろうか?
答えは同じ。何故なら1リットル=1000立方cmであるため、100リットルは100000立方cmだからだ。
だが単位抜きで数字だけ並べたらどうなるだろう?
当然100は100000よりも少なくなる。
それと同じで、後者のCMには土台が違うという問題がある。

何処かに移動する際、行きっぱなしではなく往復となることがほとんどであろう。自分の家から何処かに行く、そして帰るのが普通であり、行きっぱなしでそこに暮らす人などまずいないのだから。
そう考える時、車の1日1000円以上の維持費と、バスの料金上限300円を比べるのはナンセンスだ。何故なら上限300円とは1乗車での料金であり、比較するならば最低でも往復分の2乗車分を比較し無くてはならない。もちろん複数のバス停を利用するような使い方をするならば、3乗車分、4乗車分と比較対象は増えていく。
つまり、車1日1000円以上の維持費と比較する正しいバスの料金は、2乗車分以上、つまり上限計算で600円以上とするのが正しいのだ。

さらに後者のCMには問題がある。
その内容は車をやめてバスを利用しよう、ではなく、車もいいけどたまにはバスを利用しようというもので、さらには『車だえよりもバスを使う方が安くなる』と受け取れるような内容だからだ。

冷静に考えた時、前述の車の1日の維持費とバスの2乗車分(1日分相当)の料金の比較は、実は車を利用している人がバス利用に切り替えた時にどうなるか、ということを示している。
つまり普段は車を使いたまにバスを使うということは、車の維持費+たまにのるバス代となる。とすると、仮に1日バス乗車券(600円)を購入して朝から晩までバスを乗り倒したとしても、車を所有している以上は比較対象は燃料となるガソリン代以外にはないということだ。これではどうがんばっても安くなるということはない。

後者のCMはある意味では耳心地の良いモノではあるが、実態を捉えたものとは言い難いのだ。

では実際にはバスは高い乗り物だろうか?

BeFMで流れているCMでは車の維持費は1日1000円以上としていた。それを採用すると、年365000円、10年間で3650000円の維持費用が掛かることになる。もちろん実際にはこの程度では済まない可能性も高い。
そこで今回はネットで幾つか検索した結果より、軽自動車の車両代800000円、年間維持費350000円☓10年間と計算し、車の維持費は1日1178円、月35340円となった。

普段バスを通勤等に利用した場合、八戸市内の場合に現在の上限運賃が300円であるため、往復600円☓30日=18000円に各種割引が掛かった料金となります。一番割引が少ない1ヶ月の通勤定期券で3割引なので、12600円。
土日が休みと仮定し週1回程度1日乗車券(600円)で市内を移動する計算で1ヶ月に5回利用として3000円。
すると交通費(バス代)は1日520円、月15600円となる計算だ。

車での移動からバスでの移動に切り替えると、今回のバス運賃上限300円計算であっても交通費が半額以下になる計算となる。
この差は非常に大きいと言える。

八戸市に暮らす人の給料はけして高くはない。公務員や一部企業を除けば年200万円以下、いやそれどころか年150万円以下で生活する人が大勢いる。
そこから計算すれば、実質手取り12万円以下の人がその範囲内で生活しなくてはならない、という現実が見えてくる。

12万円の中で、交通費が月35340円か月15600円かは非常に大きなウエイトを占めるはずだ。月に2万円も違えば暮らしもだいぶ変わるはずだ。車がないことでデメリット=自由な時間に移動できなくなるということを考慮しても、一考の価値はあるはず。

にも関わらず、八戸市内の多くの人は少ない給料の中で車を購入するという道を選んでいる。
何故か?
車がないと仕事に就けないケースが多いためだ。
八戸では通勤に車を利用している人がほとんどだ。理由は様々だが、バスなどで通勤できない(バスが通っていない、就業時間に走っていないなど)場合も多くあるだろう。

言い換えるなら、バスなどの公共交通を利用することで個人の出費が抑えられるにも関わらず、その出費の元となる生活費を稼ぐためには車を所有しないといけない、という矛盾が存在するのだ。

ではそれを解決するためにはどうすればいいのだろうか?
そのためには中心街やバス停に近い場所に、就業場所を確保する必要がある。

ハッキリ言うがこの部分については個人ではどうにもならない、八戸市自体が動いてくれないと変わらない部分である。

だがもし八戸市が公共交通の必要性を実感し、同時に市民の生活の質向上を賃金アップなどの非現実的な手段ではなく、生活費における交通費の圧縮による金銭的な余裕に見いだせるのであれば、あるいは実現する可能性もあるのではないだろうか?

現状八戸市内で暮らしていくためには、仕事の面で車を所有していないと難しい部分が多分にあります。
加えて、多くの商業施設では車ユーザー優遇の施策を行なっている反面、バスなどの公共交通利用者には優しくないという現実も存在します。
しかしながら、公共交通無くしては暮らしていけない人たちも存在します。

それらを包括的に考えた時、余裕のある人たちがあえて脱自動車論を実践するならば、八戸市における公共交通の未来には一筋の光明が差すのではないかと期待します。

▼参考リンク▼
杉山淳一の時事日想:あなたの街からバスが消える日(Business Media 誠11/9)
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